音楽を「料理」する力




楽譜に書いてある音符を

いかに素敵な演奏に

できるか。



これには

様々な知識や練習方法が

必要になってきます。



演奏は料理とよく似ているなと

思います。



具沢山なおつゆを作るのに、

なべに水を入れ、

野菜や肉をゴロゴロと

そのままいれて火にかけても、



なかなか火が通らないし

肉は先に茹でられてしまうし、

うまく茹でられませんね。



水を沸かしながら、

食べやすくて火が通りやすい

大きさに野菜を切って、



固いものから順に

様子を見ながらいれ、

全部がちょうどよく

柔らかくなってから

適量の味付け。



常に様子を見ていないと

ゆで過ぎたり

沸きすぎてこぼれたりします。




音楽を演奏できるようにするのも

練習に順序があります。




まずはどんな曲なのか

聴いたり見たりして

イメージをつかんだり、




とりあえずどんな感じなのか

音を出していってみる。




最初は大雑把でいいと思います。

全体のイメージが

なんとなくわかり、

こんな音楽なんだなー、

ここ難しいなー、

ここ素敵なところだなー、

という程度です。




ここからどう仕上げていくかに

頭を使います。




音が取れないと

リズムもつけられないので、

指使いを決めたり

指がそこにいけるように

何度も弾いてみる。




指の運び方や弓の使い方が

スムーズになるように

慣れるまで練習していく。




音楽は時間の芸術でもあり、

リズムや長さを

テンポの中で弾けるように、




ゆっくりイメージしながら

何回も弾いたり、

テンポアップしても

弾けるようにするために、




様々な区切り方をしたり

リズムを変えて弾いたりして、

きれいな流れで

弾けるように意識して

練習します。




大事ことは、

一回一回、

今なにをしたいのか決めて

取り掛かることです。



でないと、

その弾き方で弾くために

弾いただけ、

通してみただけとかになり、




あまり頭にいいものが

残りません。




一回をムダにしないよう

注意しながら

練習を組みたてていきます。





それでもできないところは

チェックマークをつけて、

毎日やるようにします。




何ヶ所かは

そんなところが

あるものです。




やってもやっても

すぐ忘れるー、

理解しづらい!

というところ。




ここまでだけでも

まあまあ、

曲らしくなってきます。




でも、

まだ自由にやりたいことを

表現できている訳ではなく、




なんとかまとまってきた、

という段階です。




さらに、

楽譜に書いてあることは

材料のようなもので、

自分で美味しくなるように

料理していかなくては

なりません。




楽譜に書いてあるものは

暗号のようなもので、




これを自分が演奏するならば、

どんなふうにしたいか、

それに向かって足りないことは

なにか?




どうすれば

もっと理想にちかづけるのか。





あれこれ想像と工夫が

必要になります。




技術的な問題だけでなく、

流れやハーモニー感、

精神性や音楽性、

その時代や作曲家の特徴など、




多方面から

自分のやっていることを

見ていかないと




なんか違うなーとか、

なんかへんだなーという

音楽になり、




このあたりは

とても難しいところです。




大事なのは、

どれだけ沢山のヒントを

持っているか。




視点は多いほど

解決策が沢山見つかります。




何も気づかけなければ

そこまでです。





知識だけではなく、

うまくいかないなら、

違う練習方法はないかとか、

なにか思いこんでいることが

邪魔になっていないかとか、




自分の中を分析していくことも

必要になります。




他人の演奏と

比べてみるのも

いい手段だと思います。





私ができないときに

なっている状態は、




運動がおそい、

時間の感じ方がおかしい、

体の使い方が合っていない、

フレーズがわかっていない、

ハーモニーを分かっていない、

練習回数が少ない、

イメージングが足りない、



などなど、

いくつかあります。




いっぺんにやるのは無理なので、

ひと項目ずつ

いつもより突っ込んで考えて、

試してみて、




できない原因を考えて

新しい方法を試してみて、

の繰り返しです。




とても地道な作業では

ありますが、




だんだん

やれなかったことが

できるようになってきたり、




分かって弾けるように

なってきたりすると

嬉しいものです。




楽譜に書いてあることを

弾いて終わり、

なのではなく、




その先の創造していく過程を

面倒くさがらずに

取り組むことで、




考える力がつくし、

自分なりの練習の仕方が

分かってきます。




得られたものは

自分の宝です。




そして、

他のことにも通用する

潜在力が身についていくと

思いますし、




なにより

自分自身を見つめ、

自分を知り、




人間性を磨く

大切な時間、場にも

なります。




人と演奏するならば、

様々な個性とどう向き合うのか

という社会性も

嫌でも学ぶことになります。




数十年、

自分自身を磨く

貴重な手段を持ってこれたことに

とても感謝しています。